朝日館の女将のてんてこ舞日記


東日本大震災で被災した小さな旅館の女将の日々
by asahikanokami
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撮影秘話(その5 不鮮明な記憶)

S社のKさんとはメールや電話で何度お話をしたでしょう。

コマーシャルを作るにあたって、間違ったことを流すわけにはいきません。娘が病気になって、闘病して、角膜を提供するまでのことを、こと細かく取材されました。

しかし、私の記憶があいまいなのです。

少々痴呆が始まっているのかもしれません。若いころは記憶力を誇っていた私。自分にすっかり自信をなくしてしまいました。そして気がつきました。

娘の闘病中、仕事と看護と家庭とで、今日が何日か、何曜日か、わからないほど夢中で過ごしていました。

あまりに衝撃的なことばかりが起きて、現実を受け止められないでいました。第一、若い娘が自分よりも先に死ぬなど、到底受け入れることなどできません。

ただひたすらに神仏に祈り、奇跡が起きることだけを信じていました。

私の頭はどうしたら病気を治してやれるかということでいっぱいで、日々の出来ごとを記憶しておく余裕などなかったのです。

「亡くなった時の年齢は26歳ですか、27歳ですか?女将さんのブログを読むと両方書いてあるのですが・・・・」

「えぇ・・・・ちょっと待ってください。26・・・いや27・・・今お位牌を見てみますから」
という具合でした。

娘が亡くなった時の年齢さえはっきりと覚えていなかったのです。

人間は自分が覚えていたくないことは記憶しないのかもしれません。あの辛い日々を記憶していたくなかったのでしょう。
今回、改めて娘が亡くなった時を思い出す作業をしました。

亡くなってから今年でちょうど10年目。
「お母さん、記憶を整理して、悲しかったことはすべて心の底にしまって、これからは楽しかったことばかりを思い出してね」
と娘が言っているのかもしれません。

by asahikanokami | 2009-07-06 23:39 | 私のこと
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