元朝日館の女将のてんてこ舞日記


東日本大震災で被災した小さな旅館の女将の日々
by asahikanokami
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冬の桜

日曜日21時から始まるドラマ「冬の桜」

昨夜も見た後、いろいろな思いが頭の中を駆け巡って、とうとう夜中の二時頃まで眠ることができませんでした。

普段は、本を開いて数行読んだか読まないかのうちに眠ってしまうほど寝つきが良い私。眠れないなどと言うのは年に1回あるか無いかなのです。

脳腫瘍で、自分に残された時間が少ないと知った主人公は、雪原に立つ一本の桜が満開になる日を夢見ます。この桜が咲くのをこの目でい見たいと願います。

そのストーリーがどうしても娘と重なってしまい、あの辛かった日々のことばかり思い出されて眠ることができませんでした。

ちょうど11年前の今頃。お医者さんに呼ばれました。
「今日、菜穂子さんに桜が咲いたらお花見がしたいから退院させてほしいと言われたのですが、言いにくいのですが・・・・」
と先生はちょっと口ごもってから
「桜が咲くころまで持たないと思うんです・・・」

私は何も言えずただ頭を下げて先生の部屋を出ました。涙があふれて、そのまま廊下でしゃがみこんで泣きました。

その日の夕方、娘の病室に大きな花瓶が運び込まれ、太い桜の枝が二本活けられました。

驚く私に、もうすでにその頃は気管切開をしていたので、話すことができない娘が、ノートに
「先生が桜の枝を折って来なさいと看護婦さんに言ったんだって。見つからないように夕方になるのを待って、病院の庭の桜の枝を折って来てくれたの。看護婦さんたちが大騒ぎで活けて行ってくれたの」

嬉しそうにそう書くと、最後にこう付け加えてウインクしました。
「桜にも処方箋が出たのかな」

病室は暖かいので、活けられた桜はたちまち蕾をほどき、あっという間に満開になりました。娘はよほどうれしかったらしく、毎日写真を撮り
「相馬で一番早いお花見だね」
とノートに書きました。

冬の桜_f0061402_21234782.jpg


桜の花は、娘の命の最後のエネルギーになりました。3月いっぱい持つかどうかと言われて娘は、ちょっと元気になり、4月に病院の庭の桜が満開になった時には、車いすで庭まで下りて、お花見をしたのです。

治療や薬は病気を治癒する力がありますが、桜の花も同じように生きる力になるのです。桜の枝を折って来なさいとおっしゃって下さった先生に、今でも感謝しています。

桜が好きと言った娘。桜を見てちょっと頑張れた娘。
そのことがACのアイバンクのCMになりました。

桜が咲くたび、先生を思い出し、感謝の気持ちでいっぱいになります。

さて、ドラマは来週が最終回。
主人公は満開の桜を見ることができるのでしょうか。

by asahikanokami | 2011-03-07 21:24 | 亡くなった娘の話
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