元朝日館の女将のてんてこ舞日記


東日本大震災で被災した小さな旅館の女将の日々
by asahikanokami
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潮の香り

昨日はうららかで暖かな良いお天気でした。

朝起きてこられたお客様が
「窓を開けたら潮の香りがしますね」
と言います。さっそく窓を開けて深呼吸。ス~~~・ハ~~~。

しかし、潮の香りがしません。潮の香り??ス~~~・ハ~~~。

どんなに深呼吸しても潮の香りがしないのです。

潮の香り_f0061402_15222714.jpg


その昔。新婚旅行から帰ってきて、新地駅に降り立った時、潮の香りがしました。
「ああ、今日からこの海辺の町で生活するんだ・・・」と思ったものです。背の君がどんどん歩いていって高架橋を登っていくので
「あの・・潮の香り・・」
って言ったら(うふっ、私もその頃はまだ初々しかったのよね)背の君はクンクンと匂いをかいで
「何も匂わないべ。ほら、行くぞ」
と私を置いてどんどん歩いていってしまったのでした。

こんなにも潮の香りがするのに、匂わないのかしらと、その時はとても不思議に思ったものでした。

それから毎年暖かくなってきて、灰色の冬の海がいつの間にかエメラルドグリーンの春の海に変わる頃、お天気の良い日に窓を開けると潮の香りがしました。

「あ~~、春が来た」
潮の香りで町が包まれて春の到来を知ることが出来ました。

それがいつからでしょうか、潮の香りを感じなくなったのです。窓を開け放して深呼吸をしても何も匂わないのです。

潮の香りが私の体に染み付いてしまったのでしょうか。あの時のおっとっとと同じように何も匂わなくなってしまいました。

潮の香り_f0061402_1523610.jpg


どうやら長い年月が私をすっかりこの町の住人にしてしまったようです。

潮の香り_f0061402_15233284.jpg


昨日は何ヶ月ぶりかで海を見に行ってきました。(我が家から海までは徒歩3分です)

by asahikanokami | 2006-04-05 15:23 | 海からの贈り物
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