朝日館の女将のてんてこ舞日記


東日本大震災で被災した小さな旅館の女将の日々
by asahikanokami
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧

神様がお連れ下さったお客様

7月12日のことです。

その日は本当は仲良しグループで日帰りで温泉に行く予定でした。

しかし、前日に大勢のお客様があって、その後片付けがありました。温泉から帰ってきてからお掃除するからと言ったのに、おっとっとから温泉行きの許可は下りませんでした。

楽しみにしてたのにぃ・・・。

ちょっとふくれっつらでお掃除を開始。
するとお昼近くに一人のお客様がお出でになりました。自転車旅行のお年寄り。雨に降られて難儀をしていると言います。

宿泊の場合は15時からチェックインできます。時計を見たらまだお昼前。でも、なんだかお気の毒な気がしてお部屋を用意しました。

大きな荷物を自転車から降ろし、ビニールの雨合羽を脱いだらTシャツの胸の所に大きな文字。

『鎮魂』

そしてその下に
『日本一周自転車旅行 原野亀三郎 80歳』(お名前を掲載することはご本人了承済みです)

なんでも昨年は2ヶ月かけてドイツを自転車で廻ってきたそうです。それで自信がついたので今年は日本一周の計画を立てたそうです。

4月30日に長野を出発。日本海沿いを走って北海道に渡って北海道を一周。太平洋沿いに本州を南下して来たのだとか。

ずっと雨降りで、本当はもっと走る予定だったのに、なんだか急に走るのが嫌になり朝日館にはいってこられたそうです。

すごいことに、ただ海岸沿いを走っているだけでなく、島も一回りしているのだとか。佐渡とか、北海道沿岸の小さな島も走ってこられたそうです。

これから南下して沖縄まで行き、その先の島々も廻り、長野に帰る予定は来年の6月30日!!

80歳と言う年齢にも驚きます。

「私は戦争のせいで青春がありませんでした。多くの友人が戦死しました。彼らの青春は永久にありません。残された私が青春を楽しまなかったら、あの世に行ったときに彼らにあわせる顔がないんです。だから、今、青春をしてます。彼らが私と一緒に日本一周旅行を楽しんでいるのを感じながら走ってます」

「でもねぇ、やはり辛いですよ。走るのは・・・。走りおわったっときに、楽しかったって思うんでしょうねぇ。走っているときはちっとも楽しくなんてありません。人生も旅と同じですね。その時は必死に生きているから楽しくなんてないけど、後で思い返すと『あの時は楽しかったなぁ』なんて思いますから」

次の日の朝
「帰りたくないなあ。このままここにいたいなあ。もう一泊しようかな」
とおっしゃったけれど、曇り空を見上げて
「やっぱり雨が降らないうちに出かけることにしましょう」
と出発していかれました。(写真も掲載許可をいただいて撮らせていただいたのにピンボケでした・・・残念)

時々、神さまがお連れ下さったお客様ではないかと思う方がおります。その方のお話を聞いていっぱいエネルギーをいただく時があります。お話をお聞きして心が震えるときがあります。

そんなお客様はたいてい
「朝日館に泊まるつもりはなかったのに、なぜか泊まってしまった」
っておっしゃいます。それはきっと神様がお連れしたからだと思います。

温泉に行かないでよかった。もし行っていたら原野さんをお泊めすることはなかったと思います。そしたら原野さんの素敵なお話も聞くことが出来ませんでした。

原野さんは今頃どこを走っていらっしゃるのでしょうか。
雨に当たって難儀をしているのではと心配しています。梅雨明けがこころから待たれます。

by asahikanokami | 2006-07-28 21:47 | 我が家のお客様
<< 相馬名物??? 遠野むかしばなし紀行14(終わり) >>