朝日館の女将のてんてこ舞日記


東日本大震災で被災した小さな旅館の女将の日々
by asahikanokami
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跡隠しの雪

むが~~し、むがしの話だと。

12月の23日頃、一人の坊様がある村にやって来たんだと。
その年はえらい日照りで、飢饉になり、村人は難儀していたんだと。

「一晩泊めてもらわれねぇべか」
って軒ごめ(各戸ごとに)聞いて歩いたども
「わが(自分の)食い扶持さえままならねえ時、とても坊様など泊められねぇ」
って、どこの家にも断られちまったど。

とうとう村はずれまで来て、最後の一軒に聞いてみたと。
そしたれば、そこの家の爺様が
「婆様。おらえ(私の家)にも何もねぇが、泊めてやれ」
って言うので、一晩泊めてもらうことにしたと。

囲炉裏には鍋がかかっていたが、その中身はお湯ばかりで何も入ってなかったと。

「せっかく泊まっていただいても、何もご馳走する物もなくてなぁ」
と婆様はため息をついて白湯をご馳走したと。

坊様は
「なんの、なんの。寒い日は囲炉裏の火が何よりのご馳走だ」
って喜んだと。

それを聞いていた爺様が黙って外に出て行ったと。いっときばかりしたら爺様の手には一本の大根がぶら下がっていたと。

「お庄屋様の畑に、大根が取り残してあったのを、黙っていただいてきた」
って言うんだと。

「爺様、ほんでは、泥棒だべ。もし見つかったらどんな目にあうかわがんねぇべ」
と婆様が心配すると
「なぁに。俺が喰うなら泥棒だども、お坊様に差し上げるんだから泥棒ではねぇ。この大根を焼いて食べていただくべぇ」
って言ったと。

婆様は囲炉裏の火で串指しにした大根を焼いて、味噌をつけてご馳走したと。ほっぺたが落ちるほどうめぇご馳走だったと。

お坊様が
「爺様と婆様も一緒に喰ったらどうだ」
って言ったども
「いや、我々がそれを喰ったら泥棒になってしまうがら」
って二人は喰わねぇがったと。

夜になって寝てからも、爺様と婆様は気が気でなかったと。
畑にはきっと爺様の足跡が残っているべな。その足跡をたどってきたら、爺様が大根を抜いてきたのがわかるべな。お庄屋様にどんな目に合わされるか。この村から追い出されるかも知れねぇ。

坊様が何度も
「何もしんぱいねぇ。心配することねぇ」
って言ったども、明日の朝になったら・・・・と思うと、二人とも、心配で心配で、まんじりともしないで夜を明かしたと。

その夜、深々と冷えてきたと思ったら夜中ごろになって、空から白いものが落ちてきたと。朝起きて見たれば一面の銀世界で、爺様の足跡は雪が積もってきれいに隠されていたったと。

旅の坊様は弘法大師様だったんだと。爺様と婆様が足跡を気にしているもんで雪を降らせたんだと。

それからというものは、この辺りではお大師講の日(冬至)には、他所の畑に収穫しないで残っている野菜は黙って採ってもいい日にしたんだと。

どんどはれ。

(良い野菜は収穫して冬の備えて備蓄しますが、くず野菜はそのまま収穫せずに畑に残して、来春鋤き込んで肥料になります。そのくず野菜を貧しい人が黙ってとってもいい日がお大師講の日の12月23日なんですね。なんという優しい日なんでしょう。この昔話を語るとき、心がホッコリするんです。大好きなお話です)

by asahikanokami | 2006-11-20 22:16 | 昔話 | Comments(4)
Commented by よよよっち~ん、、、 at 2006-11-27 23:48 x
こういうお話って大好きだな~♪ほっこりほっこり~♪
お大師さまもアチコチで引っ張り出されて大変ですが~きっと笑って見ておられることでしょうね~o(^▽^)o
Commented by 朝日館女将 at 2006-12-04 21:36 x
【よよよっち~ん】

ね、ね、素敵なお話でしょ!

この話を語っていると、ドンドン優しい気持ちになってきます。

そこで一句。

大師講 跡隠しの雪 降り始む

畑隅の 大根白し 大師講

大根鍋の 湯気柔らかに 大師講

お粗末!
Commented by よよよっち~ん、、、 at 2006-12-05 01:15 x
ん~うんまいっ!♪~(⌒◇⌒)~♪
Commented by 朝日館女将 at 2006-12-05 19:59 x
【よよよっち~~ん】

ありがと~~!!

最近、俳句に凝ってます。まだまだ、始めたばかりで上手ではありませんが、一生懸命に勉強して、ここに胸を張って載せられる様になりたいと思ってます。
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