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むか~しむかし
漁師の網にいっぺぇ魚がかかったと。 ほんで、死んだ魚が 閻魔様の前にずらっと並んで、地獄に行くか天国に行くか決めてもらったと。 「これ イワシ。おめぇは何か良いことをしたか?」 「へぇ。おらは安く売られて貧しい人の口に入ることになっておりやす」 ほんでいわしは極楽行に決まったと。 「ヒラメ、ヒラメ、おめぇはどうだ?」 「へぇ。おらはこなれがよくて病の人にも食ってもらっておりやす」 「タイ、おめえはなにかいいことしてきたがん?」 「へえ。おらはおめでたい時に、膳の真ん中さ据えてもらって、たいそう喜んでもらいやす」 ほんでヒラメもタイも極楽行ときまったと。 次に来たのがフグであったと。 「フグ、おめぇはいっぱい人を殺しているっていうでねぇか」 「とんでもねぇ。あれは欲たかり(欲張り)の人間が食ってはならねぇとこまで食うから死んじまうのであって、おらのせいではござりやせん」 「いや、何人もの人ぉ殺してきたんでは極楽にやるわけにいかねぇ」 「いやいや。閻魔様。あれは人間が悪いので、おらは悪くねぇ」 と言ったんだけど、とうとうフグは地獄行きに決まってしまったんだと。 「閻魔様。なんとか極楽にやってもらいてぇ」 フグがあんまり必死になって言うもんでな、閻魔さまもだんだんフグのことをもごせぐ(かわいそうに)なってきたんだと。 地獄に連れて行くために迎えに来た赤鬼に 「おめぇなぁ、このフグを連れて、極楽っていうところをちょこっとだけのぞかせてやってこい」 といいつけたもんで、赤鬼はフグを連れて極楽の門の前まで行ったと。 「ほらここが極楽だ。この門の先はおらだって行かれねぇんだからな。ほら、帰るぞ」 ってゆったればフグが 「閻魔さまは極楽の中をちょこっと覗かせるってゆったんでねぇか。中見せてもらいてぇ」 「ほおか。ほんではちょこっとだけだぞ」 と、赤鬼は門番にゆってちょこっとだけ門を開けさせたと。 そのちょこっとの隙間からフグはチョロリっと入っちまって、戸をバチャンと閉めてしまったと。 赤鬼が門の外で 「こら!フグ!!戸をあけろぉ。おらが閻魔様にごしゃがれる(怒られる)んでねぇが」 ってどなったっけば、門の中からフグが大きな声でゆったと。 「フグは内~!鬼は外~!!」
by asahikanokami
| 2008-02-03 20:18
| 昔話
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