朝日館の女将のてんてこ舞日記


東日本大震災で被災した小さな旅館の女将の日々
by asahikanokami
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<   2012年 06月 ( 1 )   > この月の画像一覧


携帯電話

「おとうちゃんもすぐに避難しろよ」

「わかった。すぐ行く。俺の携帯持って行け」

「使い方わからないからいらねぇ」

それが夫婦の最後の会話になりました。
孫を乗せてちょっと早く避難した彼女は、津波に追われながらも助​ったが、夫は帰ってこなかった・・・・・。

「避難所で息子が、おとうちゃんの携帯に電話したら、呼び出し音​があるんだよね。携帯が無事だということは、お父ちゃんもきっと​無事。
最後にお父ちゃんと一緒にいた人は、瓦礫につかまって流されて助かったべした(でしょう)。
ほだがら(だから)おとうちゃんは船方(漁師)だもの、絶対、絶対、大丈夫だと思って毎日、​毎日、携帯に電話したんだよ・・・・遺体が見つかるまでは・・・​・・」

彼女は、絶対という言葉を力をこめて二度繰り返しました。

あれから15か月。

自分の心の内を語るのには、このぐらいの長さの時間が必要だった​のかもしれません。

また、毎週集まって、エコたわしを編むことにしました。
今度は、編むことよりも、楽しむことにポイントを置くことにしま​す。
しゃべりたい人はしゃべる。編みたい人は編む。お茶飲みだけの人​も大歓迎。
皆で集まって、楽しく過ごす。そんなゆるゆるの活動です。

「なして(どうして)おとうちゃんは、あの時、私に携帯を持って​行けって言ったんだべね」

と言って、涙をぽろぽろとこぼした彼女の顔が、頭から離れない。

ぽつり、ぽつりと津波の話をする人が出てきています。

by asahikanokami | 2012-06-07 10:37 | 避難生活 | Comments(17)