朝日館の女将のてんてこ舞日記


東日本大震災で被災した小さな旅館の女将の日々
by asahikanokami
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<   2012年 12月 ( 2 )   > この月の画像一覧


新地の一本松

今朝、一本の電話を受け取りました。

「まだ、東北お遍路のポイント募集をしていますか?埒浜に立った一本だけ残っている松があるんだけど。たぶん、宮城県の亘理から福島県のいわきまでの間で残っているのは、あの一本だけだと思う」

それは絶対に、メモリアルポイントに推薦しなきゃと、さっそく、カメラを持って出かけました。
埒浜は、新地町の中でも特に被害が大きかったところです。
宮城県に通じる道路は流されてしまい、いまだに開通していません。道路も現在復旧中です。
そういう危ないところを走るときは、もちろん、我が家の運転手さんの出番です。

一緒に、がたがた道を走って浜に行って見ました。

立ち枯れている松の中で一本だけ青々と茂ってる松がありました。
あたりの松は、枯れているのに、たった一本だけ、上の方が青々としています。

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そばに行って
「あなたは、頑張っているね!」
って声をかけたら、ふっと涙が出ました。

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あたりを見ると、1年9か月たっても、茫々たる枯れ野の中に、家屋の土台がそのまま残っています。
以前、ここで確かに生活していた人がいたのです。
幸せな生活があったのです。

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きっと、今は、仮設で生活していることでしょう。
狭くて不便な仮設。でも、その中で、変わらずに幸せに暮らしていてくださるようにと祈ります。

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風が海から吹いてきます。
寒風が目に沁みる・・・・・涙が止まらない・・・・・・・・。

by asahikanokami | 2012-12-27 14:03 | 避難生活 | Comments(8)

宝物になった悲しみ

やっと、いろいろな行事を消化して・・・・・と書きたいところですが、今夜は仮設でクリスマスパーティです。
まぁ、ちょっとだけ心に余裕のある時間が持てたので、ブログをアップ。

今年を振り返ってみると、今年ぐらいいろいろな人と知り合いになれた年はありません。
本当に多くの方と出会い、そしてご縁を結ぶことができました。幸せな一年でした。
ありがとうございます。

出会う人たちに、必ず言われるのが
「大変ですね。がんばってください」
という言葉です。
私自身は、そんなに大変なことだったとは思えないのです。(いや、冷静に、客観的に見たら、ものすごく大変なことだった)

津波が襲ってきたのを見たとき。原発の事故で外出を禁止されたとき。鉄骨だけが残った我が家を見たとき。
瓦礫と化した我が家が取り壊されて更地になった時。
これから先、どうなるのだろうかという不安とともに、悲しみが押し寄せてきて号泣しました。
人前で声を上げて泣くなんて、娘が死んだ時以来です。

それでも、思いました。
「あの時に比べたら、これしきのこと、大したことではないわ」

そう、、あの時、娘が癌だと知った時、命の期限を告知された時、亡くなった時、それからの日々・・・・・。
あの時の悲しみや苦しみに比べたら、福島弁で言うと
「こんなこと、あの時に比べたら屁でもねぇべ」
とおもいました。

あの時は、悲しくて、悲しくて、もう悲しいという領域をはみ出して、自分自身が狂うかもしれないという恐怖を抱えて生きていました。
毎日、安定剤と導眠剤を飲まないと生活できませんでした。
私の危うい精神をかろうじて支えていたのは、年老いた舅の面倒を見なくちゃという思いと、女将という仕事でした。
あの時ほど、仕事があって良かったと思った日々はありません。
お客様と一緒にいるときには、娘の病気のことを忘れられました。
お客様の笑顔に、心が救われるのを感じました。お客様には、本当に支えていただいたと思っています。

私はずっと、ずっと、娘を亡くした事を不幸だったと思っていました。いや、今でも思っています。

でも、あの悲しみと苦しみを乗り越えて(まだ、乗り越えている途中かもしれないけど・・・)来たからこそ、震災と津波被害と原発事故被害という大変なことを、「屁でもない」と思えるのかもしれません。

そう思うと、あの悲しくて苦しかった日々が宝物のようです。
不幸だったことは、いつまでたっても幸せにはなりませんが、それでも人生の宝物にはなるんですね。
どんな不幸でも、人生の宝物になる瞬間が来る、そう津波に教えてもらいました。

だから、どんなことがあっても、涙を拭きながら、顔をまっすぐに上げて、時には歯を食いしばっても、大地を踏みしめて歩いていきましょう。

by asahikanokami | 2012-12-22 09:31 | 避難生活 | Comments(9)