元朝日館の女将のてんてこ舞日記


東日本大震災で被災した小さな旅館の女将の日々
by asahikanokami
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カラスの話

明日は新地小学校の4年生に昔語りをしてきます。何を話そうか考えて、カラスの話をしようと思っています。これは新地に伝わる昔話です。


「カラスの話」

昔々の話だと。
昔からカラスは嫌われものだったと。

なにせ百姓がせっせと種を蒔いても、その後からやってきては、片っ端からほじくって食ってしまう。秋になって柿などが実って、喰い頃になったからもぐかと思って来てみると、カラスが先取りして、うまい所をつついて喰ってしまう。
百姓たちは、ほとほと困ってしまって、お釈迦様のところに頼みに行ったと。

「お釈迦様、お者様。俺達が一生懸命にまいた種。カラスがやってきてすっかりほじくてしまって困っているんだが、カラスの野郎をどうにかしてもらわれねぇべか」

お釈迦様は早速カラスを呼びだしたと。

「お前は百姓が一生懸命に蒔いた種を、片っ端からほじくって喰ってしまうそうだな。百姓たちが困っているからこれからほじくっては駄目だぞ」

だけれども、カラスにはカラスの言い分があるんだど。

「お釈迦様。そう言われでも、おれたちカラスだって、何が喰わないではいられねぇ。なにも喰わなきゃ死んじまうべ」

カラスにそう言われるとお釈迦さまも困ってしまった。腕組みしてしばらく考えて言ったっけど。

「カラス、カラス。お前たちの言う事も良くわかった。それでは、これからこういうことにする。お前たちカラスは畑のものを食わない代わりに、お寺さんに上がったものは全部喰っても良いことにする。お墓のお供え物は全部喰っても良い。ただし、亡くなった人の冥福を祈って、お経を上げてから喰うんだぞ」
と、言って聞かせたと。

それからというものは、カラスはお墓に何かお供え物があるのを見つけると
「かぁ~かぁ~かぁ~」
とお経をあげてから、食べるようになったと。

そうしているうちに、だんだんに、カラスは
「誰か死ぬ人いないべか。お墓にお供えが上がらないべが」
と言って、、死ぬ人を探して歩くようになったと。

鼻をひくひくさせで、そこら中を嗅ぎまわっているうちに、だんだん鼻が効くようになってきて、今では
「この人は間もなく死ぬなぁ。そしたらお供えを食うごとができる」
と判るようになったと。

それで死にそうな人がいると、早々と
「かぁ~かぁ~かぁ~」
とお経を上げて死ぬのを待っているんだと。

そんなもんだがら、今でもカラスが集まって
「かぁ~かぁ~かぁ~」
って鳴いてると
「カラス鳴ぎ悪いこと。誰か死ぬんでないべが」
って言うんだと。

おしまい

(注:カラス鳴ぎというのはカラスの鳴き声の方言です)

by asahikanokami | 2010-09-14 22:26 | 昔話
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