さていよいよ昔話村で語り部さんのお話を聞きます。
ここ昔話村の入場料は310円。その他に100円払うと物産館の二階で昔話を聞くことが出来ます。聞くことが出来る時間は季節でも変わるようですが、11時と13時と14時から20分間です。
私達は13時からと14時からの二回、お話しを聞くことにしました。語り部は鈴木ワキさん。
大正10年生まれには見えない若々しいおばあちゃんでした。
この方のすばらしいことは声がとてもいいのです。今はその地域にしか残っていない謡曲の『まがき節』の第一人者なそうです。
種売り
ワキさんの最初のお話は『種売り』というお話でした。
むかしむかし、美しい娘がいたずもな。その評判を聞いた殿様がお城に呼んだずもな。殿様はいっぺんで気にいって側さ置いたずもな。
ところが娘っこ間違って殿様の前で屁をたってしまったずもな。怒った殿様は娘っこをお城から追い出したずもな。
その時、娘っ子の腹の中には殿様の子供居たたんだと。それでも娘っこは誰にも言わないで子供を産んで育てたずもな。
子どもが大きくなると
「なして(どうして)皆にはとど様(お父さん)いるのに俺には居ねんだべ」
って言うようになってしかたなく教えたずもな。そしたらわらし(子ども)はとど様探してお城に行ったと。
そしてお城ののまわりで大きな声で
「金のナスの種はいらながんすか(いりませんか)」
とふれ歩いたと。
そしたらその声が殿様の耳に届いたど。
「金のナスがなるのか」
と聞かれたわらしが
「はい、なります。ただし、屁をたれない娘が蒔かないとなりません」
と答えたずもな。
そしたら殿様が笑って
「世の中に屁をたれない者などいるか」
ってしゃべったずもな。
「屁をたれない者が居ないのなら、なにして(どうして)おれのおがちゃをお城から追い出した」
っていうわらしの言葉に殿様は自分のおろかさを恥じて、その親子をお城に引き取って親子仲良く暮らしなんだと。どんどはれ。