元朝日館の女将のてんてこ舞日記


東日本大震災で被災した小さな旅館の女将の日々
by asahikanokami
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ちょっと恥ずかしいのでここに載せようか、どうしようか迷ったのですが、見たいというご希望もあったので記事の写真をアップします。
f0061402_15233150.jpg


本当はもっと美人女将ですと言いたいところですが、写真は正直ですので、嘘はやめましょうね。
はい!これ以上でもなく、これ以下でもなく、等身大の写真でございます。
(写真をクリックすると大きくなります)

「桜」

嫌だ
なんと言われても嫌だ

三度も手術をした娘の体に
またメスを入れるというのか

癌の舌を切り取っても
まだ足りないと言うのか
目玉まで取り出すと言うのか

嫌だ
なんと言われても嫌だ

娘の亡骸の前で
くしゃくしゃに握り締めたアイバンク登録書

「おまえは自分の気持ちを大事にするのか
菜穂の気持ちを大事にするのか
これはあの娘の遺志なんだぞ」


桜が大好きな娘だった
桜が満開になるのを
あんなにも待ち焦がれていた


菜穂子よ
今日はどこかで
誰かの目の中で
おまえの角膜は
この満開の桜を見ていることだろう

あの時
お父さんの言葉で
角膜を残してよかった

誰かの目の中で
おまえの角膜は生きている

ほら
満開の桜が見えるかい
あんなにも見たがっていた桜だよ

あとからあとから
薄紅色の花びらが落ちてくる
お堀の水面を花びらが埋め尽くす

もし人ごみの中から
お母さんを見つけたら
瞳をピカッと光らせなさい

必ず必ず合図を送りなさい
きっときっと知らせなさい

風が吹いている
花びらが舞い上がる
花びらが舞い落ちる

私はむせかえるほどの桜吹雪に包まれて
立ち尽くしている




「涙」

顔の上の白い布をはずす
まだほんのりと暖かさが残っているほほ

眠っているような
今にも目を覚ましそうな

辛かったね
悲しかったね

もう我慢しなくてもいいのよ
もうがんばらなくてもいいのよ

泣いているの?
涙が出ているよ

角膜を提供したあなたの目には
もう目玉は無いのに
ガラスの玉しか入っていないのに

泣いているの?
涙が次々とあふれてくる

癌だとわかった時も
舌を半分取られたときも
命の期限を切られた時も
泣かなかったのに

どんな時も泣かなかったあなたが泣いている
ガラスの目玉で泣いている

本当は辛かったのね
悲しかったのね
悔しかったのね
泣きたかったのね

お母さんが辛がるから泣けない
あなたはそう言った

あなたに負けまいと
がんばったけど
ほんとはね
おかあさんはずっと泣いていたのよ
あなたの見えないところで泣いていたのよ

泣きなさい
泣きなさい
気がすむまで泣きなさい

ガラスの目玉でもいいから
泣きなさい

ほほを拭いてあげる
そっと頬ずりをしてあげる

がんばったね
えらかったね

自慢の娘だったと
いっぱい 
いっぱい 
褒めてあげるから



「桜 その2」

ねえ、あなた
あの子の桜が咲きましたよ

まだこんなにも小さな苗木だと言うのに
植えたばかりの小さな苗木だというのに

ほら ほら
根元に二輪の小さな白い花

あの子らしいですね
桜の季節まで1ヶ月もあるというのに
相馬で一番早い花を
咲かせるなんて

あの子らしいですね
もう14日も咲いていますよ
こんなにも散らずに
咲き続けるなんて

かぐや姫のような子でしたね
お月様から預かって
26年の間
大事に 大事に 育てて
またお月様に
お返ししたのでしょうか

あの子の大好きな桜を
庭に植えたのは
あれは
お友達ではなく
お友達の姿を借りた
あの子でしたね

ほら
桜を見ていると
あの子の声が
聞こえてきますよ

もう
私たちも
少しづつ 少しづつ
悲しみを
思い出に
書き直していきましょうか

ねえ、あなた
今夜は満月

まん丸なお月様の下で
あの子の桜のそばで
夫婦二人で
お花見をしませんか

by asahikanokami | 2007-03-31 15:25 | 亡くなった娘の話
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