元朝日館の女将のてんてこ舞日記


東日本大震災で被災した小さな旅館の女将の日々
by asahikanokami
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月の夜晒し(昔話)

むか~し、むかし。
ある所に長者の一人娘がいったったど。なにせ一人娘なものだから大事に育てられて、わがまま娘になってしまった。

年頃になったので隣村から婿様をもらったと。その婿様、姿かたちは良いし、親には孝行を尽くすし、使用人には親切で、働き者で、まことによい婿様であったと。

はじめのうちこそ仲睦まじく暮らしていったったが、娘はだんだん婿様に飽きてきてしまったんだと。

そうなっと、くちゃくちゃと音たてて飯食うのが気にいらねぇ、ズルリベッタリと草履引きずって歩く姿が気にいらねぇ。しまいには顔を見るのも声を聞くのもやんだぐなったど。(嫌になったと)

離縁したいと言っても何一つ不足の無ぇ婿様だもの、親が許すわけが無ぇ。娘は困って思案した揚句に山の婆さまを訪ねて行ったど。

山の婆さまっていうのは昔何があったかわからねぇが、山奥で一人で機織ってくらしている婆様であった。

「あの・・・」
娘が戸をあけて声をかけようと思ったら、白髪の婆さまが機織る手を止めて、くるっと振り向くと娘が何にも話もしてないのに
「思い直すわけにはいかねぇのがん?」
って聞いた。

娘がこくりとうなずくと
「ほんではなぁ、この山の西に虫がいっぺぇ(いっぱい)たかっている木がある。その場所を覚えておけ。そしてなぁ、虫が繭になったら、月の丸い夜にその繭をとれ。そして、次の月の丸い夜にその繭から糸をとれ。その次の月の丸い夜まで待って、その糸を紡げ。次の月が丸い夜に機を織れ。次の月の丸い夜にその布を月の明かりに晒せ。そしてその布で着物を縫って婿様に着せてみろ」
って教えてくっちゃど。 (教えててくれた)

娘は婆さまに教えられたとおりに着物を縫いあげ、月の丸い晩まで待って
「着物をこしぇえだから着せてやっぺ(こしらえたから着せてあげましょう)」
と言って、婿様の背中から着せかけたど。

娘は知っていたのか知らなかったのか、婿様に左前に着せたと。
そしたら、婿様、何にも言わねぇで、そのまま戸口(とんぼぐち)から、すぅっと出て行ってしまったど。

そのまんま、婿様は帰ってこねがったど。みんなで探したが婿様の影も形もなかったと。

3年ばかりすぎた頃、娘は婿様のことが気になり出した。
気にしだすと寝ても覚めても婿様のことばかり思い出すんだど。ほんでまた、山の婆さまを訪ねたど。

「あの・・・・・」
娘が何にも言わないうちに
「気になるのがん?」
って婆さまが聞いたと。娘がこくりとうなずくと
「ほんではなぁ、月が丸い晩の丑三つ時に、六道の辻に立っていて見ろ」
って教えてくっちゃど。 (教えてくれました)

娘が六道の辻で待っていると、月の光を背にして白い影が向こうから来るのが見えたんだと。
「おら家の婿様だべか・・・・」

その影は立っている娘に気がつかなかったかのように、すぅ~っと娘の前を通って行ったと。
その時に
「月の夜晒し~~ 知らで着て~~ 今は夜神の供をする~~~」
って歌って通って行ったんだど。

夜神の供をするっていうからにはもうこの世の者では無ぇんだなぁと 娘は思ったんだど。

               おしまい

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(だから、着物は左前に着たり、畳まないで着たりしてはいけないと教えられました。しかし、この娘の執念には驚きます。満月の晩を待って、また次の満月の晩を待って・・・・と辛抱強く次の満月の晩まで待って仕事をするのはさぞ大変だったろうと思います。私にはできないなぁ)

by asahikanokami | 2008-02-22 21:26 | 昔話
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